「罪の香り」 藤井風

「岡山弁で歌う人」という程度の認識で、「藤井風」というシンプルで覚えやすい名前の人という程度の認識で。

「方言を歌詞に入れ込んでいる」というところが、やたらとフューチャーされていたけれど、いやいや。もう何年も前に我らがポルノグラフィティ様が「アポロ広島弁ver.」やってたし。
と、胸の奥底にあった古きポルノ愛が見え隠れしたりもしたんだけれど。



きっかけは「関ジャム」で、愛すべき川谷絵音が藤井風の「罪の香り」をイチオシしていたことだった。
川谷絵音の音楽性が非常にツボな私としては、彼が大絶賛するのだから間違いないのだろう。という気持ちで、Amazon musicで早速「罪の香り」を聞いた。



導入は迫り来るリズムと音に、あぁこれは良い…と思った矢先。
突如、昭和ムード歌謡のような雰囲気に切り替わって、かなり驚いた。
それと同時に、村下孝蔵が好きだったりと、昭和音楽の独特な雰囲気が好きな私は一気に引き込まれて、聞き流せなくなった。
しかし藤井風の歌声は気怠く今風のもので、そのギャップがたまらない。
サビが近づけば近づくほど、危険なワクワクとドキドキが入り混じった気持ちにさせられるメロディラインで。

いざサビ。
予期せぬ歌詞に度肝を抜かれた。
「おっと、罪の香り」
おっと?!?この雰囲気できておいて、
おっと!?!というなんとも形容し難い気持ちになったのも束の間。
私が1番強く言いたいのは次のフレーズである。

「おっと、罪の香り 抜き足差し足忍び足」
罪の香りがそっとそっと、決して気付かれないように近づいてくる。
その表現だけでも十分、クラっときたのだけれど、問題は歌唱力と表現力で。

「抜き足差し足忍び足」
これまでに聞かせてくれなかった、なんとも優しく穏やかで、色気のある痺れる歌声になる。
これにはもう本当に、鳥肌が立った。それどころかハートに鳥肌が立ったという方が的確だと思う。
ここだけ延々とリピートできるほどだった。
これ以上は話すよりも、聞いてもらえた方が早いだろう。






私はどちらかと言えば音楽好きな方だと思っているけれど、過去に同じように心が震えた音楽アーティストは、先述したポルノグラフィティ。そして川谷絵音だ。
それ以来の衝撃だった。

ポルノグラフィティに関してはデビュー当時からのファンで、少なくとも「君は100%」という楽曲あたりまでは、死ぬほど聞いていた。CDも全て集めていた。
今でも過去の曲を聞いては、心震わすことがある。

川谷絵音に関してはTV出演し出す前に、YouTubeで「ゲスの極み乙女。」「indigo la End」を聞いていた。
なんだかワイドショーで取り上げられて、そこから人気が出始めたのも、ファンとしては「らしくていいのでは?」とすら思ったのは、熱り覚めた今だから言える話。


そして、藤井風。
見ればまだ20代前半。
とんでもない人が出てきたなあ、というのは誰もがきっと思っていることで。
音楽にさほどルックスは重要でないのでは?と思いつつも、彼はそこもぬかりなく。
長身細身で、またもや昭和スターのような男前なのである。しかし笑うと八重歯の可愛い青年で。
話せばおっとり時間が流れ、その上ピアノが素晴らしく、英語までできるとなれば、もう何が欠点なのやら。



彼の歌声の魅力は数あれど、個人的には音末の処理技術が様々あって、注意して聞くと、非常に巧みで面白い。
ナチュラルであれなのか、意識の賜物なのかはわからないけれど、どの曲もよく聞いてみて欲しい。
そこまで音楽用語等々に詳しくないのだけれど、スタッカートのように歯切れ良く終える音末が、私はなんだか妙にツボで。
それだけをオススメするには「優しさ」という曲をぜひ聞いてもらいたい。





長々と話をしたけれど、こんなに心を動かされたのは本当に久しぶりで、しばらく抜け出せそうにない。
本当ならばワンフレーズ毎にオススメポイントを紹介したい。
そうなると、えげつない文字数になること間違いない上に誰得問題なので、今回はやめておく。
まぁ、このコンテンツ自体が誰得問題で、自己満足で構成されてるからいいのか。な。



おわり。